自費出版のご案内
本 は あ な た の ス テ ー タ ス


 伊藤肇は、ユニークな経営の論客として、多くの人に共感の渦を巻き起こしたが、志半ばにして、早世している。  しかし、死後もその人気は衰えず、特にその人物論はビジネスマンの必読書といわれている。

 その代表作の一つ「人間的魅力の研究」で、人間的魅力とは何よりも性格、気質が第一だと言っている。 その最上位におかれるのが、深沈厚重の魅力、次が磊落らいらく豪放の魅力、その次が聡明才弁の魅力と言っている。

 そこで、友人を選ぶ場合には、何よりも気質、性格が合うことを第一とすべきで、主義主張で友を選んだ場合、それが変化したら不倶戴天ふぐたいてんの敵にもなりかねないと言う。 ところが性格は大体一生変わらない。 したがって生涯の交わりを結ぶためには、気質、性格をお互いに気に入り、認め合えるようでなければならない、と述べている。
深沈厚重な人物の典型として取り上げいる西郷隆盛については、面談を申し込んだ相手が刺客であることを承知の上で、面談している。 しかも、西郷のパンチの利いた話に相手は気を呑まれ、そこそこに逃げ帰ったという。そして、会う人ごとに、「西郷さのような大豪傑は見たことがない。」と語り続けたという。

 今年亡くなった作家の城山三郎は、伊藤肇と交友関係が深かったが、その著作で、石坂泰三をとりあげた「粗にして野だが卑ではない」などは、伊藤肇の人物評の中で高く評価している人として記憶しておいていいだろう。(K)




 グレン・グールドは、天才的ピアニストとして世界の人々を魅了したが、生涯独身を通し、51歳で世を去っている。先日、そのグールドの生き様と人となりを紹介するテレビ番組を観た。

  その中で、孤独な晩年のグールドをなぐさめた一冊の本が紹介されていた。 夏目漱石の「草枕」である。グールドはこの本を何百回も読み返していたと伝えられている。

 “山路を登りながらこう考えた。 智に働けばかどが立つ。情にさおさせば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。…”
この有名な出だしの部分は、多くの人が口ずさんでいることだろう。

 そのあとに出てくるシェレーの雲雀ひばりの詩「前を見ては、しりえを見ては、物欲しと、あこがるるかなわれ。腹からの、笑といえど、苦しみの、そこにあるべし。
うつくしき、極みの歌に、悲しさの、極みのおもいこもるとぞ知れ。」も人生の機微に触れる詩として愛唱されているが、グールドのように、徹底的にこの作品にほれ込んで、バイブルのように愛読したということは、漱石にとっても嬉しい限りで、あの世で会心の笑みを浮かべているに違いない。

 たで食う虫も好き好きで、本の好みもそれぞれ異なるが、とかくこの世は住みにくいとすれば、せめて徹底的にほれ込める一冊の本が欲しいものである。




 昔のことわざとして「虎は死んで皮を残し、人は死んで名を残す」という言葉があります。 それだけ人間にとって名を残すことは自己実現の最上位に置かれる欲求であり、願望であると思われます。

 ところで後世にその名をとどめる人は、ごく一握りの飛び切り優れた人たちです。例えば、日本文学の世界で言えば、源氏物語を書いた紫式部や俳聖と言われる松尾芭蕉、明治の文豪夏目漱石などで、死後もその声価が衰えることはありません。

 このような文人は何百年に一人しか輩出しない例外中の例外ですが、そこまで行かなくとも、各界の分野で活躍し、後世に名を残す人は沢山おります。

 ひるがえって自分自身のことを考えて見ましょう。後世に名を残すなど夢のまた夢としても、これまで生きてきた上で様々な出会いや思い出、喜怒哀楽の沢山詰まった記憶のロッカーを誰でも持っているはずです。

 その記憶のロッカーを開き、引越しのときの要領で、その中からどうしても残しておきたいものだけを取り出し、どうでもいいものは棄ててしまう。こうして残された足跡を文章化し、自分の生き様として子や孫に伝えたい。

 つまり、生きた証を自分史として残したい。このように考えるのが、少なくとも自分自身とまともに向き合う人の行き着くところではないでしょうか。そしてこれこそが自分史づくりの原点といえそうです。(K)




 自費出版といえば、ひと昔までは恵まれたごく一部の人たちの独壇場と考えられていましたが、
今では、誰でも気軽に本を出せる時代になりました。

 俳句、短歌、詩、エッセイ、創作など様々な文学的表現の世界に親しんでいる人たちは、日常での喜怒哀楽をその言語世界に投影し、それによって心の支えや何らかの慰謝を得ていると思われます。そして発表してきた作品や書き留めた作品を、やがて句集、歌集、詩集、エッセイ集などの形で出版したいという願望も強まります。

 自費出版をされる方々は、このような文芸の世界に親しんできた方々が多いのは当然ですが、そのような世界とは無縁に生きてきた方々でも、ある年齢に達した時、例えば定年、古希、喜寿、傘寿、米寿などを記念して、自分の生きてきた歴史、いわゆる自分史を子孫に残したいと考える方は沢山おられます。

 自費出版の世界はこのような方々によって支えられていると言っても過言ではありません。

そこで、この欄では、自分史に取り組む初心者の方々のために自分史の原稿づくりのポイントについて、何回かにわたりご一緒に考えてみたいと思います。多少ともご参考になればうれしく存じます。(K)